☆ 人は見た目が100%と言うけれど

☆ 「人は見た目が100%」と言うけれど、余りに世論が情と言うか見た目に流され易いので、どうしても言わずにはいられなくなった。

☆ 雑誌は読んでいないので、あくまでテレビの報道に限る感想だが、日大の悪質タックル問題について、実際に関学の選手に対して、無防備な背中に堅いヘルメットでセ思い全体重を乗せてぶつかりに行って怪我を負わせた日大の宮川選手を擁護する報道ばかりだ。

  ついには、被害者の父親までもが、宮川選手に対する減刑の嘆願書を集めたいと言い出している。 

☆ これって、変じゃないか。

  宮川選手は言ってみれば、学校のクラスで圧倒的な力を持つイジメの中心生徒内田君に「あいつ気に入らないから、締め挙げてこい」と言われて、全く知らない何の罪もない他の生徒をケガを負わせるまで締め上げ行た挙句、ついでに当たるを幸いその辺にいた二、三人の知らない生徒も小突いてきた生徒だ。

  そして、宮川君はそのイジメを先生に見つかって、教室から追い出された時には、「いずれはみんな忘れるさ」とタカを括って、「誰にも命令なんてされてないよ」とまだイジメグループの仲間外れになるのを怖がって内田君を庇っていたら、ケガを負った生徒の親が警察に訴えだした。それで、自分がやった事はムショに入るかも知れないような事だったんだと気が付いて、「僕が悪いんじゃない。僕に締め上げろと言った内田君が悪いんだ。内田君に逆らうと仲間外れにされちゃうから、仕方なくやったんだ」と叫んでみた。 

  そうしたら、余りに命令した内田君の顔が悪人面だったのに対し、全ては内田君のせいだと叫んだ宮川君はイケメンで誠実そうだったから、みんなが「そうだ、そうだ、悪いのは影で糸を引いてる内田君だ。宮川君は悪いって謝っているんだし、イケメンの彼がそんな悪い人な訳がない。みんなで宮川君は許してあげて、また仲間になってあげよう」と教室のみんなが言い出した。

  これって、おかしくないか。

☆ イジメって、イジメの中心にいた子だけじゃなく、仲間外れになるのが怖くって何の罪もない子のイジメに加担した子も、イジメをただ黙って見ていて子もみんな悪いんじゃなかったか。「イジメてこい」と言われたら、みんなが「そんなこと出来ないよ」と言わないとイジメはどこまでも広がって、イジメは永遠になくならないだろう。

 

☆ そう、宮川選手は、そこに教唆があったにせよ、権力者からの圧力があったにせよ、犯罪をしろと言われて断れなかった人間だ。そんな選手を擁護する風潮にはぞっとする。彼がすべきだったのはきっぱりと「人を傷つけるなんて、そんな事はできません。コーチや監督は僕を犯罪者にしたいんですか。犯罪者にならなきゃ、このチームにいられないならチームを辞めます」と言う事だった筈だ。と言うよりそう言うのが法治国家日本の国民の当然あるべき姿だろう。

☆ ヤクザの親分に「玉を取って来い」と言われて、対立組織の組員を殺した鉄砲玉を誰が擁護するのだろう。だが、鉄砲玉は逆らったら組にいられないどころか、自分自身が他の組員から殺されかねないと言うのっぴきならない状況で殺しを引き受けたのにだ。

☆ ところが、宮川選手がコーチや監督の「選手を潰してこい」と言う不法な指示に従ったのは、彼自身が言ってるように「自分が今後も試合に出たい」と言う極めて自己中心的で身勝手な理由からだ。彼は鉄砲玉のように逆らえば自分の命が危うくなる訳でも、妻子を人質に取られていた訳でもなかった。学生でいられなくなるで訳でさえもなかった。ただ試合に出られなくなると言うだけのことが、人を殺傷することより大切だったと言う極めて歪な価値判断基準を持っていたに過ぎない。その宮川選手を擁護し、褒め称えかねない国民の意識と言うのは、かなり怖いものがある。

☆ 被害にあった選手の怪我は偶々比較的軽いものだったが、それは被害にあった選手が日頃からよく鍛え上げた身体の持ち主だったからに過ぎない。普通の人間なら、背骨が折れて死んでいたかも知れない。いや、普通の人間でなくても、被害にあった選手でも宮川選手のヘルメットがほんの少し別のところに当たっていたら、死にはしなくても半身不随になっていたかもしれない。

☆ 「人を傷つけてこい」と言われて否定もせず、そのまま人を傷つけたような人間でも、その人間がイケメンで誠実そうに見える限りは許してしまう。そんな社会は幼稚に過ぎないか。